大会参戦記

第49回全日本オセロ選手権の振り返り

更新日:

こんにちは、ラスクです。

この記事は、先日参加した第49回全日本オセロ選手権の参戦記です。

前半では対局の内容を、後半ではその他大会全般のことを雑に振り返っていきます。

(オセロ棋譜再生ブログパーツ 「Hamlite」(https://hamlite.ifdef.jp/index.html)を使用。

「>>」で1手進む。右端「>n」を押すとn手目の直前まで飛ぶ。)

お試し用

試合の振り返り

試合の棋譜

1回戦 c4c3d3e3f4d6d2f2e2f3e6c6c2f5c5f6g3e1g4b6d1f1g6b5b4h6a6a4e7d7f7e8a7a3f8g8b7c7c8g7g1b2a5b3c1b1a1a2h8d8h7g5h5h2h4a8b8g2h3h1

2回戦 f5d6c3d3c4f4c5b3c2e3d2c6b4a4b5g6f2f3e2f1e7f6e6f7a5c7c8e8d7e1a3b6g8b7g3d1g4g5a6f8d8c1h6h3h5a8h4h7g2g1a7b8h1h8g7h2b1b2a1a2

3回戦 f5d6c3d3c4f4c5b3c2b4c6d2e6b5a5a6a7b6g3c7f3d7e3f7f6e7c1e2f2d1a4e1f1a3a2b2g8g6f8e8c8h8g5h3g2g4h5b8a8b7h4h1b1h6h2g1d8a1g7h7

4回戦 c4c3d3e3f6b5b4c5f4d6c6d7f2b3e7e6d2f7a6a4c2g6c7f5d8b6e8e2g4g5f8e1d1f3f1g3a7a5a3b1c1g1h6h5h3g2h4c8b7a8b8a2h1h2a1b2g8g7h7h8

5回戦 f5d6c3d3c4f4c5b3c2b4c6d2e6b5a5a6a7b6g3c7f3d7e3f7f6e7c1e1a3g6a4e2f1b1d1g1f2b2h6g7d8g4g2h4h5g5h3c8b7a2a1h1h8h2h7a8g8b8f8e8

6回戦 c4c3d3e3c2c6d2c5f3b4d6e2b3d1a3b6b5c1d7a5a4a2f1e6f5g5g4f4h5d8b7f7e7a8g3e8c7f6g6e1b1f2g7h8h7f8g2h6g8h4h3h2b2h1b8g1c8a1a6a7

1回戦 駒形五段

黒:駒形さん 白:ラスク

(>>で進めてね)

分け勝ちを貰ったら相手は黒持ちを選択、珍しい。

こうもり定石に。こばさんの為に用意した12手目c6。いつもはc5に打っている。c5からではこちらから仕掛けにくかったため、c6を新たに研究した。

互いに最善で進み、20手目b6が0に戻す変化。相手がd1に打ち、お互い未知展開に。

36手目g8が気合いの入った手(最善)。

b7と打たれて怖いが、意外となんとかなる。ストナーにも見えるが、実際ストナーにはならない。39手目の相手のc8が悪手で、g7とかわすことが出来る。c8ではなかった場合、まだまだ難しそうだった。そのまま勝ち切る。

2回戦 結局二段(新三段)

Twitterで「結局さんに負けた」とツイートしてしまったので、結局さんはリアルネームではなくハンドルネームで記載する。

開会式前に打つ人は当たるジンクス。そして、負けるジンクス...。前回の全日本では、みらいさんと開会式前に打って、その後4回戦であたり、僕が大ぽかをして負けた。今大会でも同じ展開になってしまった...。開会式前にオセロを打つものではない。

黒:ラスク 白:結局さん

伏石勝負で勝って、引き分け勝ちを取る。黒番に。何を打ってくるかとワクワクしていたら酉。ああ、酉ストレートね、と最善受けで分け勝ち狙いに。

しかし相手が16手目g6と変化。すぐにお互い未知展開に。

25手目a5が深読みの悪手(下図)。ここはd7と団子石を作るべきだった。上辺の連打を嫌っていたが、心配しすぎだった。長考の末の手だっただけにとても悔しい。ここから少しずつ悪手を重ね、相手のペースに。

25手目評価値(棋譜Boxを使用)

33手目g8が決定的な悪手(最善はf8)。相手のg7が冷静な好手で、白はいつでもf8から黒を太らせることが出来る。

苦し紛れの39手目a6も見事にいなされ、いい所なしで完敗。

33手目~終局まで

finさん杯の再来です。(準決勝でボコボコにされて、YouTubeお蔵入りになったやつ)

年明けオセロもいつも結局さんに負けるし、彼奴(きゃつ)は大事な時にワシの前に立ちはだかるのじゃ。

筋道を立てて長考する力の不足を感じた試合だった。

3回戦 大髙四段

黒:ラスク 白:大髙さん

相変わらず伏石に勝って分け勝ちを貰う。

対FJT。-2→-4の多段変化を使う。これは事前に用意していた。

オセロクエストやYouTubeで手の内を見せまくりのため、僕のFJT(特に-2変化)は最上位勢には対策されている可能性があると感じていた。

酉ストレートならまだしも、分岐数が果てしないFJTを最善受けする(分け勝ちを狙う)度胸はない。(前回の全日本ではその作戦を採用していたが。)

そのため、オセクエでほぼ見せたことがない多段変化を深めに研究して準備していた。

(相手が強いが故に)想定していたハメ進行になり、相手には申し訳ない気もしたが、43手目まで暗記だった。

終盤に石損はあったが、そのままリードを守り切り勝ち。

用意していた定石がここまで刺さるとは想定外だった。

4回戦 香西三段

黒:香西さん 白:ラスク (31手目f8まで)

初めて伏石に負けて、分け勝ち権利を取られる。白を選択。

得意定石の対バッファロー戦に。いつも通りの最善受けをする。 

相手の24手目を受けて暗記が切れるが、自然な手を心掛けてさほど時間を使わずに打つ。

29手目黒g4の後で、少し手が止まる(下図)。白優勢に感じていたが、g5f8f3g3と進むと意外と難しそうだ(下のHamlite要参照)。

g5f8f3g3(実戦とは違う進行)

上辺と右辺の捌き方が難しく、左辺で黒に手数を稼がれそうでもある。どうやら一筋縄ではいかないと盤面を睨む。しかし、g5以外の手は無くはないが、天王山を無視するのは不自然だ。そうした思考を辿って、g5をサクッと決断した。この思考の流れは今対局のハイライトの一つだ。結果的にg5は最善だった。長考して悩んだ挙句他の手を選択していたら、結局さん戦の二の舞になっていたかもしれない。

想定通り相手にf8と打たれたのが下図。ここでよく見るとf3よりも良い手がある。せっかくなので問題形式にしてみよう。是非考えてみてください。

問題 白番 f3より良い手は?

答えを表示する

 

たまに見る手筋だ。今回の場合、

  • 黒a3の後、白a5と潜れるようにしている。
  • 黒f1の後、白a5が打てるようになる。
  • f列が黒一色のため、e1c1f3d1の流れを心配する必要がない。
  • 黒a5が右上方向を返さない手になったが、黒a7の余裕手を潰すためもったいないなど強みがない。

などの理由からe1がピッタリな手になっている。

駒形さん戦の36手目g8と同様、見えていても打つために勇気の必要な手だが、念入りに確認して選択できた。

ここからペースを掴んで10石勝ちとなった。

終局まで

この試合が今大会で一番終盤石損が多かった。46手目g2と打ったのが16石損だった(最善はh4)。しかし、g2からはほぼ一通りの手順で進むため、思考リソースを温存することや、事故を避けるためにも、悪い選択ではなかったと思う。

特に今大会では石数は成績に何も影響しないため、勝ちを確信したら多少の石損は気にせず、時間と思考リソースを遣わずに打ち進めてしまう方が合理的だ。

と、石損の言い訳をしてみる。

さて、目標の四段権利獲得まであと1勝となった。上位テーブルは強者ばかりだが大丈夫だろうか。

5回戦 浦野七段

もはや言わずとしれた強豪選手。血がたぎります。

一番複雑で面白い試合だったため、長めに振り返る。

黒:ラスク 白:浦野さん

分け勝ちを貰い、黒番に。

生では何を打つのだろうとワクワクしていたらFJTだった。

相変わらず用意していた多段変化で対応。

なんと27手目まで大高くんと同じ進行に。

28手目e1で暗記切れ。

直後の29手目a3は緩手。a2と穴あきの山にすべきだった。a3に打つと、d3の白石が消えてしまい、白がg6を一方向で打ててしまう。

下図は32手目まで進んだ盤面。黒の分かりやすい狙いとしては、f5の石を消してもらい、c8,d8と連続かつ一方向で打つこと。ただし、この盤面で考え込むも、その手順が存在しない。強いて言えばg7ならば狙えるかもしれないが、代償が大きく積極的に打ちたい手ではない。

32手目まで

ちなみに29手目で最善のa2と打った場合は、白は手がもたず、黒c8が一方向で打てる展開になりやすい。冷静に考えればa2は打てるはずの手であるだけに勿体なかった。

実戦の展開に戻ろう。33手目はやむを得ずf1と打ち、想定通りb1d1g1f2b2と進む。

f1b1d1g1f2b2

d8とh6の2択で悩む。d8g4が勝てそうになかったため、h6を選択。相手がg5ならばg4で勝てそうと睨んでいたが、あっけなく最善のg7に打たれる。

g7にはd8に打てばよいと思っていたが、d8後に左下が黒から打てない4マス空きになる。そのまま偶数で進み、黒a1を強制されると大敗になる形だ。e8やc8もよぎったが、h6と打ったからには弱気になるわけにもいかないと感じ、d8に打つ。

ここまでのh6g7d8はお互いそこまで時間をかけずに打った3手だったが、実際は細かな違いがあり難しい手だ。互いの気合の入りようがわかる強い打ち回しだったと思う。

h6g7d8 気迫の手順

その後白にg4と打たれた盤面が下図。盤面を見るに、どうやら黒が悪そうである。

42手目まで

この時点で13分程時間を残していた僕はここで7分程の長考をする。まず、考えるべきは、いかにして偶数を回避するかである。今回の場合あり得そうなのは、a2からg8のCラインを(黒or白で)通すことだ。そこのCラインには連打の匂いがかすかにある。または白からa2と打ってもらえれば、左下の連打がなくなるため、それを狙うのも良い。以上より、どうやらg2が一番可能性がありそうだと気づく。これを打つのに7分も使ってしまったが、上記のような思考をしていればもう少し時間を使わずに打てたはずだ。ここの時間の使い方も反省点だ。黒h3からの展開を精査するのに時間をかけすぎてしまった。

黒h3の後の盤面が下図だ。ここで有効な白の手が多かった。しかも、どれも黒にチャンスがありそうな手なのだ。

43手目h3の場合(実戦とは違う進行)

例えば、白g5にはh5がある。白g2にはh1と取って、左上の連打が狙えそうな形だ。しかし、最終的に白h5が厳しいと判断して却下した。h4と取ると、先述のCラインが通せなくなってしまう。g5の場合でも、h7とかわされて、連打が出来そうにない形になる。

h3h5g5h7(厳しい?)

以上より、長考の末g2を選択し、実際に最善だった。

43手目評価値

しかし、h3に打っても面白かったかもしれない。というのも、h3後の評価値は下図のようになっているのだ。

43手目h3後評価値

意外にも、僕が嫌っていたh5は黒の勝ちだった。h5後は、g5h7h8e8h4g2g8f8と進み(下図)、ここでa1と打つことで、右上を滑り連打できる。

h3h5g5h7h8e8h4g2g8f8(a1!)

とはいえ、この複雑な長手数(11手)を読み切ることは、僕には出来ない。

ちなみに、43手目h3後は白b8が唯一の勝ち筋である。黒g5で危なく見えるが、白b7と打つことで勝ち切れるようだ(b7以外は負け)。悪魔のような盤面である。

再掲

g5b7

さて、実戦に戻ろう。Cラインを活用した連打を狙ってX打ちをした。この局面でお互い残り時間は7分程。複雑な盤面を打ち切るには少々不安に感じる持ち時間だ。緊張感が漂う。

ここは白a2が最善なのだが、左辺を黒の確定石にするため、勇気が必要な手だ。実戦の白h4は2石損だが、まだ白勝ちの局面。時間がないためh5と打つ。白h7ならh3でストナーになることに気づくが、相手はg5とくる(実はこれが敗着)。オセロクエスト的な感覚でh2では勝てそうもないと思い自然なh3を選択する。

44~49手目まで

ここまでの相手の狙いは黒h3によってc8が一方向返しになることだ。しかし、すでに黒が逆転していて、実はこの局面は黒の勝ち盤面だ。相手のc8後、黒b7とラインを再び通して勝っている。e8と取られて黒に何もないように見えるが、あなたには黒の勝ち筋が分かるだろうか。問題として出題してみるので、よろしければお考え下さい。

問題 黒番 勝ちは一つ

答えを表示する

 

連打の匂いを嗅ぎ取って通したCラインがここで活きてくる。白g8にはh8→h7と連打。白h8にはb8とかわせばCライン黒一色が活きて完勝の形だ(下図)。正直これは黒に都合が良い盤面だった。僕は当然読めていなかったし、c8を打った時点で浦野さんも見えていなかったようだ。(互いに時間がなかったので仕方がない。天がこちらに味方をした。)

黒に都合が良い

黒b7後、e8では厳しいと悟った相手はやむを得ずa2から切る展開を選ぶ。以下、自然に進んで黒の8石勝ちとなった。

終局まで

複雑な盤面の連続でとても刺激的な対局だった。すでに疲れている中での対局ということもあって、対局後は頭がオーバーヒートしそうだった。

この試合の良かった所・悪かった所をまとめてみる。

良かった所

  • 準備した多段変化が刺さった。
  • 39手目h6と41手目d8をさほど時間を使わずに打てたことで終盤に時間を残せた。持ち時間20分とはいえ、気合いを入れて早く決断すべき手もある。
  • 43手目以降、崩れることなく自然なうち回しが出来た。実際、この試合の終盤石損は0だった。長考になるほど自然な手を通すことの重要性は高まると個人的に思っている。

悪かった所

  • 暗記が切れた直後の緩手。この試合で一番致命的なミスだった。相手に圧をかけたいという欲があり、早めに打ったことが仇となった。
  • g2に時間をかけ過ぎた。

終盤で運よく黒有利の展開になったことに救われた試合だった。

6回戦  宮崎七段

4勝1敗とすでに目標は達成しているが、ここまできたら入賞したい。

相手の宮崎さんも長年トップで活躍している選手だ。

すでに頭はパンクしかけているが、最後の力を振り絞る。

結論から言うと、この試合は序盤からこちらのペースで進み、危なげなく勝ち切ることが出来た。

黒:宮崎さん 白:ラスク

相手に引き分け勝ち権利を取られたので、こちらは白を選択。宮崎さんといつもオセロクエストで打ち合う、蛇→コブラの展開に。お、やっぱりあの宮崎さんだ、などと思いながら普段通りに進める。

19手目で最善はf5だが、暗記切れか変化か(恐らく後者)黒d7とくる。こちらの暗記が切れたので、念入りに確認してa5と打つ。どうやら相手も暗記が切れたようで、ここで考え込む。相手はa4と来たが、この手でどうも黒が打ちづらくなったようだ。この手以外の場合は、どこかで黒a6で白内側の爆弾を作るか、または黒b2とXを打たねばならず、その展開を嫌ったのだと思う。

a2f1と進み、ここの白e6が妙手。この手でペースを掴み、白の打ちやすさ、黒の打ちづらさを活かしてそのまま勝ちきることが出来た。

24手目e6!

6試合を通して

研究が活きた

事前に準備していた定石を打った3試合は全て勝つことが出来た。

研究したのは、

  • 自分の弱点(特に暗記が不十分なこちら+2の最善受け)
  • オセロクエストで打ち過ぎた-2変化の代用
  • 特定選手対策(こばさんのこうもり、伊藤さんのベルグタイガー)

研究しておき事前に打つ定石を決めておくことは精神安定上も良い。ただし、準備に時間と手間がかかるのが大変な所。

思えば、唯一黒星の結局さん戦では、相手から仕掛けられてこちらの暗記が早々に切れてしまったのが良くなかった。

序盤研究の重要性を再認識した。

長考に慣れていない

結局さん戦の長考後のポカや、浦野さん戦の43手目g2など、筋道を立てて考える練習が足りていないと感じた。

(勇気がいる手、今大会で言えば駒形さん戦の36手目g8と香西さん戦の32手目e1を選択できたのは良かった。)

大会の振り返り

多くの人と会えた

「ネット(X,オセロクエスト)での知り合い、ただし顔を知らない」という人とたくさん会えて嬉しかったです。声をかけてくださる方も多く、温かい気持ちになりました。お声がけ頂いた皆様、ありがとうございます。こちらからも声を掛けられるように少しずつコミュ力を鍛えておきます;

昇段について

余談ですが、連盟二段から四段に昇段できました。嬉しい。

運営について

恥ずかしながら全日本オセロ選手権が、僕が出場した2019年以来の開催だったことを知りませんでした。長いブランクがあり、運営の方々も様々な困難があったことと思います。スムーズな運営により、我々選手が試合に集中できたこと、大変感謝しています。

まとめ

総じて楽しい大会でした。王座戦の出場権利を得たので、日程が合えば参加したいと思います。

P.S. 連盟レート1480,11位(現在)になりました!

広告

広告

-大会参戦記

Copyright© おせろく , 2024 All Rights Reserved Powered by AFFINGER4.