オセロクエストで丁度いい局面に出会ったので、久々に記事にしてみようと思う。
ここで探求するテーマは、「相手の手を絞ることで安全に長手数読みを行う方法」だ。
読者はオセロクエストで2100以上、特に2200前後のレートを持つ人を想定している。
局面
本記事で検討するのは以下の局面だ。
黒番:
黒優勢だが、方針を間違えると負けかねない局面だ。
以下の手順を考えてみよう。
手順:e1d1b7a8g8f8h4
7手読みと比較的長めの手順だが、ほぼ一通りのため長手数の割に読みやすい。
(一種の強制力を働かせて)相手の手を絞り、読む範囲を狭めることで、長い手数を安全に読むことが出来る。
手順の解説
狙い
まず局面全体の特徴を捉えよう。
この局面で考えるべきは、いかに黒の手数を稼ぐかだ。手数重視の局面のため、辺をある程度捨ても良い。相手の選択肢を無くして、うまく逆偶数にすることが重要だ。
現在、右下が逆偶(白から打てない奇数空き、以後「逆偶」で統一)になっている。しかし、左下の3マス空きと合わせて捉えると6マス空きと偶数になる。
さらにh4に打つと、右下の逆偶が崩れてしまう。つまり、右下の逆偶は盤石ではない。
次に左下に注目すると、左辺がピュアブロックなので、黒左下X→白隅取りと進んだ後に、潜る手が余裕手になる。(左辺の中辺に黒石がある、つまりピュアではないブロックの場合、こうはならない。これは手筋なので頭に入れておくと良い。)
つまり、b7a8の後、a7が逆偶になる。これを目指して手を進めていく。
具体的な手順
さて、具体的な手順を見ていこう。
手順(再喝):e1d1b7a8g8f8h4
ちなみにこの手順は双方最善である。
それぞれの手について詳細を見てみよう。
e1の後、白にd1以外の候補はあるか。
一見争点に見える右辺だが、よく見ると白に有効な手はない。自然な手はd1ぐらいだろう。ここで左上が逆偶になる。
(解析ソフトは「棋譜box」を使用。)
e1d1b7の後、白にa8以外の候補はあるか。
上辺を取る手はあるが、黒g2とXラインを通す手が待ち構えている。黒b7は「隅を取らないと、その隙に反対のXに打って、ラインを通してしまうぞ」というメッセージを含んだ手なのだ。したがって、白は仕方なくa8を選択する。
e1d1b7a8g8の後、白にf8以外の候補はあるか。
これもNoで、黒にf8を先着されると下辺が黒で確定してしまう。よって、やはりf8が自然な手となる。
そして最終的に黒h4が左下方向に石を返さない好手となる。この手順により、右上以外の3箇所が逆偶になり、後は煮るなり焼くなり好きにできる局面になった。
このように、白は自然な手を選択しているだけで、負け局面に陥ってしまう。
これは、僕が実際にオセロクエストで黒を持って遭遇した局面である。1分間考えた結果、上記の手順を選択したところ、相手は手拍子で予想通りに応じてきた。
結論
この記事で伝えたいのは、相手の手を制限し、応手がほぼ一通りしかない手順を読むことで、長手数の読みを安全に行うことができるという事実である。
逆に、相手の手が制限されていないときに長手数を読むと、予想外の手を打たれて計画が水の泡になってしまう。
そういう意味で、相手の手を制限する手は強い。今回の黒b7や黒g8などがその好例である。
おまけ それぞれの手の手筋性
黒のe1,b7,g8はどれも手筋である。
つまり、それぞれ適切な根拠に基づいた応用しやすい手だ。
一つずつ解説していこう。
e1
これは先打ちの手である。
もし白にf1と打たれた後にe1に打つと、斜めが返ってしまい、相手に余裕手を与えかねない。
e1の後にf1と打たれる分にはその心配がないため、先に打つのが良い。
例えば、e1d1の交換を挟まないで本手順のようにb7a8g8f8h4f1と進むと、e1d1を入れた場合と比べて上辺が扱いにくくなる。(実際、評価値は変わらないが、自分が扱いやすい盤面にする方が理想的だ。)
e1は白d1と打たれた時に切り返せないという弱みがあり、それゆえに却下しやすい手だが、上記のように考えれば切り返せないことは問題ではないことが分かるだろう。
b7
この手の手筋性は前述したように以下の二点で説明できる。
「放置すれば対角線を通してしまうぞ」という強制力と、隅を取られた後に急いで潜る必要がないという点だ。
この両者が共存しているため、b7はなかなか凶悪な手で、「逆偶を作りたくないために隅を取りたくないが、取らないと対角線を通される」という葛藤を白に与えている。
g8
この手も強制力のある手の一つで、「辺に空いた2マスの穴」の応用版と見ることもできる。
今回の局面では、f8を半ば強制させて右下の逆偶化とh4の好手化を実現している。
おまけ 効果的な読み方
さて、ここで試合中の読みの推移についても参考までに記しておこう。
(再喝):
試合中の第一感はd1だった。しかし、f1と打たれた後の手順がいまいち想像できずに却下した。
続いてb7を考えたが、どこかで相手にf1を打たれそうでいまいち自信が持てなかった。
最後にe1を考えた。白f1が厄介ならばe1d1の交換を挟めば読みやすくなると考えたからだ。
おそらくここまでに30秒以上を使って、その後の2,30秒で本手順の7手読みをした。
このように、オセロクエストなどの持ち時間が少ない試合において、勝ち局面ではシンプルに勝つ手順を探す力が求められる。
そのためにはまず、浅く広い読みで簡明に勝てる手順を探す。続いて、深く狭い読みでその手が本当に良い手か確かめる。(強制力のある手は深く狭い読みを助ける。)
特に方針を問われる終盤では大切な考え方だ。
終わりに
今回は教科書通りの読みが出来たのが嬉しかったので記事にしてみた。
毎度こんなに上手く行くほどオセロは甘くない。でもたまに想定通りに事が運ぶと嬉しくなるよね。
そんな記事でした。