大会参戦記

第17期オセロ王座戦の振り返り

更新日:

こんにちは、ラスクです。

先日参加したオセロ王座戦を振り返っていきます。

ボコボコにされるのを覚悟して迎えましたが、なんと5勝1敗で五段に昇段することが出来ました。

(記事内にHamliteと棋譜Boxを使用しています。)

1戦目 M七段 黒持ち

初戦から強豪に当たるが、王座戦は魔境なので仕方がない。

31手目から

ハメ進行の一つになり、+8程に。そのまま形勢有利を活かして勝利。試合を通して2石しか石損しなかったが、形が黒にとって一方的にわかりやすかったのでラッキーだった。

2戦目 K七段 黒持ち

32手目から

これまたハメ進行の一つに。自然な打ち回しを心がけてそのまま勝てたためこの試合も運が良かった。

唯一ファインプレーと言えるのは、32手目のa3。

この時点で15分程時間があり、ここで4,5分考えて決断した。

その間に考えていたことを言語化する。

a3の狙いは滑りとf7一方向返しの見合い。

しかし、この手が難しいのは、どの流れになってもそれなりに危なそうということだ。

特にa3a2f7の後の、黒h3や黒h5から危険な香りがする。

h3盤面 a3a2f7h3

h5盤面 a3a2f7h5

しかし、最終的にどちらも事故が起きないと判断した。

h3の場合はe2の石が残ることが大きく、h5の場合はc3,d3,e3の石が残ることが大きい。

a3a2f7後にg6と打たれる分には白h5と先着できるから安定する。h5は黒に打たれると上辺をピュア山にされてしまうため先に打ちたいのだ。

g6h5

ここまで考えてどうやら左辺取りは問題ないという結論になった。

しかし、a3を打つには黒g6も検討しなくてはならない。左辺を滑って良いように思えるが、左辺の余裕手の種がないため、簡単には詰ませられない。

a3g6a6h6h5h2と進むと下辺方向に破らざるを得ない。

a3g6a6h6h5h2

ここで少し厄介なのが、余裕手の種を作るe7が3方向返しと返しすぎに見えることだ。

右辺の穴を埋めれば2方向返しになるが、そのためだけに穴を埋めるのはもったいない。実際のところは、直接e7でも,穴を埋めてからe7でも+16で勝っている。しかし、e7を読んでいる局面から実際の局面までは6手離れており、事故が起きかねないと思っていた。

ここまで読んだ結果、a3は危険な分岐が多すぎると判断し、他の手を検討した。しかし、結論から言えば他の有力な手はなかった。

例えば一番シンプルなa6a7a2g6という展開は、互角形勢まで戻ってしまう。

心の中で溜息をついて、仕方なくa3を選択。種消し戦法に切り替えられる恐れもあったため、時間を残すことを意識した。実戦ではa3a2f7g6h5と進み、安定する形になった。結果、そのまま危なげなく勝ち切ることができた。

大幅に有利でも妥協してはいけない局面は存在する。

3戦目 T四段 白持ち

相手の9手目を受けて暗記が切れた。これは辛い試合になると覚悟、実際ハードな試合だった。

14手目

一番の山場は14手目。

14手目

ここのe1を打つために3,4分使った。

この局面はやたら選択肢が多く、しかもどれも下手すれば大損の展開になりかねないため難しい。3手読みをするだけでもハードな局面だ。

僕が考えた候補手は、a3,b5,c5,e1,f3,f5。どれも全く違う展開になるため一つずつ丁寧に読むしかない。

a3はやりすぎな気がするため却下。b5f3f5はd4,e3のミニラインが気持ち悪いため却下。c5は良さげだが後の黒b5,黒f3のどちらに来ても防戦一方のため保留。f3も相手の応手の候補が多すぎるため最終手段。f5は自然に見えるが、黒f3の後思ったより何もないため却下。

結果選択したe1は、黒f3ならば白f5、黒c6ならば白c5!で白がやれそうと判断した。

実戦はe1c6c5と進んで、白のペースとなった。

25手目~33手目ほどの中盤戦は一番事故が起きにくく、さほど時間を使わずに打って良いというのがラスク流である。ただし、~19手目の最序盤で暗記が切れてしまった場合は、丁寧に読んだ方が良いことが多い。この付近は3手を読むことも難しく、そして間違えたら即詰み形勢になりかねないため非常に厄介だ。それゆえに最序盤の暗記は重要とも言える。

36手目

進んで終盤に差し掛かった局面。

せっかくなので問題も出してみよう。白番 勝ちは一つ。

答えを表示する

 

最後は綺麗にb7から詰めて勝つことができた。

b7から詰める 14手目からの棋譜

何かと考えることが多く疲れる試合だった。

4戦目 O三段 黒持ち

手数が詰まって難しい中盤だったが、相手のミスを皮切りにこちらのペースに。一つのミスで流れが変わるため、オセロは本当に難しい。

32手目から

流れが変わった局面から。初手e8ならば白+2。

5戦目 K六段 黒持ち

筑波オープン以来の再戦。

この試合は気合だけで勝った印象だ。

これまたハメ展開になる。

曖昧な記憶から引っ張り出して覚悟を決めた25手目b8。

25手目 覚悟のb8!

ストナーをされても有利だぜ、と主張する手。

少し巻き戻して23手目c4も勇気の一手。

妥協するならばb6f7c4で良いが、少し損である。

実戦に戻る。

ストナーをされ、下辺を捨てる。曖昧な記憶によれば有利なことは確かだが、まだまだ難しいと感じていた。31手目にe1がよぎるが、自然なb3を選択。

31手目

結果、最善で、e1ならば6石損だった。

その後も自然に打ち回す。来るべき難しい局面に備えて時間は温存していた。

しかし、結論から言えば運よく難しい局面は訪れなかった。

41手目c1が実質的なトドメの一手。これは僕の好きな手筋だ。

c1の切り返しに対して、一般に白f2と「切り返し返し」を打つ手が好手となる。しかし、今回の場合は白f2と打つと右上が白から打てない奇数空きになってしまうのだ。このように、相手の切り返し返しが悪手になる場合、c1の切り返しは強くなる。

相手は白f2では逆転の目がないと判断したのか、実戦はc1b1f1g1f2と進む。

詰め方がいまいち分からずここから読みが乱れたが、時間を残していたこともあってそのまま勝ち切ることが出来た。

23手目から終局まで

勇気と運だけで勝った印象だが、強いて言えば簡潔でまとまった思考を元に中盤を打てたことが勝利に繋がったと思う。

6戦目 K八段 白持ち

ここを勝てば決勝の実質的な準決勝。

強豪ひしめく王座戦でここまで来れるとは思っていなかった。

ここに来て期待と不安から緊張してきた。

体が硬く、呼吸も浅い気がする。それになんだか足が痺れて......ってあれ?これって熱中症?

念入りにストレッチをしたら少しマシになった。体調管理も実力のうちである。

試合

11手目を受けて暗記が切れる。形で分かる方もいるかもしれないが、3戦目と同じ定石でこちらが少しだけ有利だ。

14~20手目

自然な打ち回しを心がけて僕はサクサク打つ。対してK八段はそういう棋風ということもあって、一手一手慎重に読む。僕は相手の考えている時間を利用して必死に考えた。20手目のd6まで全ての手で1分も使わずに打ち、相手にプレッシャーをかけることが出来ていたと思う。

しかも局面は変わらず若干有利そうである。あまりにも自分が上手いこと打ち回すので、20手目のd6を打った時「あっ、僕は第二のベン・シーリーなんだな」と思った。その後の22手目、まだ勝負所ではないと思いサクッと打った手がこの対局で一番大きなミスとなる。僕はベン・シーリーではなかった。

g6は自然な手に見えるが、実戦のようにg6c1e1f1e2f2h3と進めてみると意外と白が難しい局面になってしまう。

22~28手目

22手目はc1に先着するのが筋の良い手。e2f1と進み白模様である。

c1e2f2

相手のc1を甘く見積もっていたために起きたミスだった。

Cライン

さて、実戦に戻ろう。

再掲

この局面ですでに互角形勢に戻っている。厄介なのはa7-g1のCラインが黒一色であることだ。

このCラインが最終的に牙をむく。

だいぶ進んで白44手目。

右上の形が逆偶として働いてしまうため、白はそれに対処する必要がある。

当初の予定は、「左辺のウイングを攻めてa1を取る圧力をかけ、相手がa1に先着してきたらb1を温存して逆偶数を回避する」という作戦だった。

しかし、その狙いが例のCラインによって実現出来ないことに気づく。

参考:Cラインに石が載っていた場合

当然Cラインには気づいてはいたのだが、何か他の狙いも含ませれば対処できると考えていた。しかし、残念ながらこの局面で白から出来ることは何もない。結果、答えを出せないまま時間が迫り、悪あがきをするものの相手に完璧に対応されて大敗となった。

終局まで

この試合はK八段の強さが光った試合で、僕が反省する所は少ないと感じた。ただただ相手が上手かった。特に39手目からの流れを的確に打てることがすごい。

f7e7f8e8c8

時間がない中、下辺を取って白に何もないと読み切れるのは流石である。他にも黒の勝ち筋はあるのだが、この流れが最も白が抵抗しにくい。

今まで試合の流れが良く、運を味方につけていたが、この試合は22手目のミスから流れが悪くなり負けた。流れが悪くても粘る力も今後必要になってくるのだろうと漠然と感じた。

あとがき

6試合を通して

全ての試合で序盤は作戦勝ちで、正直運が良かった。その上で中盤のミスも少なく、終盤も分かりやすい局面に出来たため総じて綺麗な試合が出来た。

K八段に負けるまで今年は負けなしで、昨年の全日本から数えて22連勝していた。いつの間にか連盟のランキングも6位になっていた。望外の成績に自分でも驚いている。

僕は今までオセロクエストで勝つために序盤,中盤,終盤の戦略をそれぞれ構築してきたが、今回で全国優勝も夢ではないと実感できたため、少しずつ生の長考も視野に入れた練習をしていこうと思う。

本大会の中盤の読み方はオセロクエストの読みを延長したものであり、トッププレイヤーの読みよりも浅い読みをしている自覚がある。あの決勝戦を見せつけられるとどうしても自分の実力不足を思い知らされる。自分のプレイスタイルを崩しすぎて調子が悪くならない程度に、長考の読み方をアップデートしていきたい。僕はベン・シーリーにはなれそうもないから。

昇段について

ラスク
Twitterで報告出来ていませんでしたが、本大会で四段から五段に昇段しました!

本大会では3位決定戦は行われず、僕は4位となった。2位・3位に六段資格が与えられるためあと一歩だった。同率3位という扱いにならないかと連盟に問い合わせた所、今回はそういう方式ではないようだ。残念だが、しょうがない。こちらの我儘にも関わらず連盟は丁寧に応対してくださった。

3位ではなく4位になる理由

大会全般について

強豪ばかり、都会人ばかり(そうでもないのだけどそう感じる)でアウェーな雰囲気を感じていた。田舎もんの引きこもりオセラーには眩しすぎます。とはいえ、対戦相手になったり、近くに居る時に会話したりで少しずつ知り合いが増えてきて嬉しかった。この辺は自分のペースでやっていければと思っている。

運営はスムーズで、予定時刻よりも早く閉会となった。運営に携わってくださった方々、いつもありがとうございます。これだけ大人数が集まって大きなトラブルがなく楽しく終えることが出来たのは素晴らしいことだと思います。

終わりに

世界戦に選抜された選手の健闘を祈ります。僕も来年以降の代表権を獲得できるよう精進します。

 

前回の全日本の参戦期はこちらから。

第49回全日本オセロ選手権の振り返り

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