大会参戦記

第18期オセロ王座戦の振り返り

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昨年よりいくらか涼しい浅草橋で、第18期オセロ王座戦が開幕。

近くのスーパーでサンドイッチと麦茶を調達。店内はおじちゃんとおばちゃんが多く、どこか落ち着く空気だった。

今回から同意書は不要となり、GOROでの入場にも慣れて、いわゆる0回戦はスムーズに通過。

戦績は2連敗のち4連勝。内容は良いところも悪いところもあったが、大きな悪手が多かったのは反省点だ。その反省を中心に、全6試合を振り返る。

いつもより長めの記事なので、お時間のあるときにお読みいただければ。

(Hamliteを多く貼っているため、読み込みがやや重いかもしれません。今後は少し抑える予定です。)

1戦目 Y三段 黒持ち

中盤の構想を少し間違えて早々にXを打つ展開に。これは難しくなりそうだと覚悟する。

d8f6e7と進み、e列が一色でやや黒が厳しい。

d8f6e7b8!

ここで、b8が見えて、まだやれるかもと希望を持つ。b8は2石損だが、実戦的には相手に圧力をかけられるため良い手だ。このような一見危険な手を生の長考でもサクッと決断できるのは自分の強みだと思っている。

少し進んで、39手目g6が痛恨のミス。

g6 痛恨のミス

ここはh5h6g6と進めればXラインを切られない。その後f8から切られてg8a1と進んだ盤面と実戦のa1まで進んだ盤面を比べると、白の右下の自由度が違うことがわかるだろう。

h5h6g6f8g8a1

勝負所ではないと思い、割とサクッと打ってしまったが、このミスはやってはいけないレベルだ。

この後は、思った以上に黒に何もなく、また相手に完璧に打たれてしまい、そのまま何も起きずに負けてしまった。

終局まで

39手目のミスを避けるには「嗅覚」を研ぎ澄ませる必要がある。「g6h5と進みXラインを切られてると何も出来ずに負ける可能性があるな、だから時間を残しても意味が無いからここである程度時間を使い、もしかしたら存在する良い手を探そう」という嗅覚。今までの流れからの感覚的な形勢判断と、g6h5後の形勢のズレを感じ取る嗅覚。

僕は割とこういう嗅覚を大切にしていて意識しているのだが、今回のこのミスはその意識が足りていなかった。

2戦目 O六段 白持ち

この試合は序盤で、何度か経験した進行にも関わらず再び同じミスをしてしまい、一気に形勢が不利になる。脳内では「またやってしまった」とすでに反省ムードだったが、表では「狙ってましたけどね」という顔を作っておいた。正直、この試合の反省点はその序盤のミスだけだった(つまり相手が強かった)。

34手目でg2,g3の2択に4分間悩んだ。しかも最善は検討していなかったb5だった。

34手目 実戦の進行

g2の強みはg2g3と進むとg列の邪魔な白石を処分してもらえること。g3の強みは

  • 相手に「右上の逆偶数を温存するか否か」の選択を迫れること
  • g2g3の場合と違って白g7のXライン通しの含みが残ること。

詳しく解説しようと思ったが、評価値的にはどこも大して変わらず面白みがなかったため割愛する。ただ、試合によってはこの細かい違いを読むことは大切なことだ。

序盤の形勢不利の割には案外粘って、引き分け局面まで戻した46手目。この局面で残り時間が5分ほどだった。必死に考えたが、勝てる手がありそうでない。ここのa6が4石損で、そのまま逆偶数にハマり4石負けとなった。

46手目から終局まで

最善はg2。黒のb2とg2を潰すのが狙いだ。g2のあとはg2f7g7h1f8b2a2とg2a2b2a1b1f7g8の2分岐がある。この手順が打てたとしても白引き分け負けだ。評価値としては引き分けだが、白の方が打ちにくく、その局面を作ったO六段が強かった。

g2f7g7h1f8b2a2

g2a2b2a1b1f7g8

前回の王座戦の振り返り記事では、運が良い試合が多かったと評価していたが、正直この試合はそういう意味では運が悪かった。「勝ったら運が良かった、負けたら実力不足」と捉える方が上達に繋がるが、実際はどうにもならない試合というのは存在すると思う。

昼食

午前中に2連敗をして若干落ち込んでいる状態で昼休憩。王座戦申し込みの際にお世話になったyastyさんに挨拶をしに伺う。声をかけた時、yastyさんは昼休憩中にも関わらずオセロクエストを打っていた。体力がすごい。yastyさんにラスクを頂いた。美味しかったです、ありがとうございます。

3戦目 H二段 白持ち

気持ちを切り替えて3試合目。今度は9手目に相手が暗記ミスをしてくれた。経験のない定石で驚いたが、なんと10石損だった。こちらが手を返した後しばらくして相手が「やべっ、定石ミスったか?」と声を漏らしていて和やかになった。こういう時、ムードとしてはリアクションがあった方が楽しいが、勝負事として相手をホッとさせないためにはポーカーフェイスの方が良いのだろうか。僕はサービス精神がないから、ミスに気づいたり盤面不利でもポーカーフェイスを保つようにしている。

この試合はリードを保ったまま自然な打ち回しで勝つことができた。42手目e1が気持ちの良い決め手となった。

18手目から

4戦目 M四段 白持ち

28手目d7まではリードを確信していたが、d7に対して黒b3が強いと気づく。とはいえ白はd7しかないため、「有利です」という顔をしながらd7に打ちb3に打たれないことを祈るが、結局即決されてしまい、意外と大変な試合になりそうだと覚悟する。

28~37手目

ただ、この後は28手目から36手目まで、白の僕は自然な打ちまわしを心がけてあまり時間を使わずに打った。そんなに悪いことをした覚えはないし、多分有利ではあるだろう、というなんとなくの形勢判断である。

盤面はお互いやや難しいが、白はやれることが少ないので、こういう時は不利にならないことを祈りながら気合いで打つ。38手目まで行くと、いよいよ白は方針を立てないと行けない。

確かこの時点で12分ほど持ち時間が余っていて、ここで5分ほど考えた。あなたならどのような方針で打ちますか?難しい局面ですが、胆力のある方は考えてみると面白いかもしれません。

問題 白番 勝ちは一つ

答えを表示する

 

僕が打ったのはg6。これはなんと12石損の手だった。この後、最善で進んだ場合c1a1a5となり、その後a4g2もb1g2もどちらも白がきつい。特にa4g2h1g1が成立してしまうのが厳しい。どちらも左下の5マス空きに白が干渉できないために困ってしまう。

g6c1a1a5a4g2h1g1

b1g2

ただし、実際に打たれたのは滑りのh3で、この手によってまた白有利の形勢に戻る。右辺を当てて、狙い目だったa5に打つことができた。

g6h3h5h7a5

a5まで進んだ形は、一見a4が逆偶に見える。しかし、今、もう一つの奇数空きの塊は左下の塊であり、ここで黒が手を稼ぐことができないため、実質「a4+左下5マス」の6マス空きと捉えることができる。

僕はこの流れを読んで38手目にg6を打ったのだが、確かに冷静に考えてみると白はh3に打つ必要はなく、右辺側を放置できる。これは「長考した結果、勝手読みをしてしまい大胆な手を打ってしまう」というよくある石損パターンだ。

長考オセロこそ、自然な手を心がけるべきで、自然な手の中で正解を探す必要がある。ここでいう自然な手というのは、相手の選択肢を増やさない手である。38手目g6は確かに「3行白一色を活かして右辺に余裕手を作る」という黒の狙いは交わせる。
しかし、「右側で黒の選択肢が増える」「特にg列白一色を利用して黒が手数を稼ぎやすい」という点においてもg6は不合理な手なのだ。それに対して、正解手順のa1c1としてからh5h7g6と当てて行く手はとても真っ当で自然な手である。(右上が逆偶になるのは怖いが。)

 

実戦は狙い通りの手順で進み、相手の43手目g1が悪手で、そのまま勝ち切ることができた。g1は本格的に逆偶数にハメようとした手だが、相手はg1g2と進んだ盤面で逆偶数にならないことに気づいたようだった。逆偶数にならない理由は先述のとおりである。

43手目から終局まで(相手の時間切れ)

実はg1ではなく、最善手順で進んでいたら危ない形だった。最善手はd8。これに対して、本来の狙い通り、d8b8b7a7と進めると、ここで黒g2と通される。するとXラインが切れないため、白の2石負けとなる。

d8b8b7a7g2!

Xラインを通されても、f7で切れば良いと漠然と捉えていたが、f7はa7と干渉してしまうことを失念していた。その点でも先ほどの問題図の白g6の方針は甘かったことになる。

中盤は自然に打ちまわして有利になれたものの、難しい終盤でいまいち読みが安定しない試合だった。問題図の盤面で、最善のa1をきっちり打てるようになりたい。

5戦目 K三段 黒持ち

いつも5試合目あたりから読みの体力が落ちてくるため気合いを入れ直す。

35手目から。30手目前後で暗記が切れた。ここまで相手にサクサクと打たれるが、しかし自分は有利だと感じていた。時間は僕が残り13分、相手が16分ぐらいだったかな。35手目は今冷静に眺めるとc8が良さそうで、実際最善だ。

35手目

この時の僕は相手に時間を使って欲しい、という若干の焦りを感じていて、あまり時間を使わずにb1と余裕手を解放した(2石損)。最善のc8を選択していたらもう少し楽な展開になっていたかもしれない。

持ち時間を温存するか否かの感覚は、まだまだ経験が足りていないと感じる。

b1はもう詰め切ることが出来ますよ、と主張する手。相手に挑戦状を叩きつける感覚である。

狙い通り、相手はここで少し時間を使ってくれた。しかし、36手目に予想外のf7が飛んできて混乱する。

36手目 f7

ここで時間を使い、主にg6の後の展開を読むが勝ち切る自信が持てない。持ち時間が少なくなってきて、疲労感から読みに自信が持てないというメタ意識もあり、結局g6は却下してa2の余裕手を打った。

g6を打った場合、何も出来ずにそのまま負ける可能性があるが、a2は相手にも難しさを強要できるため、消極的な攻め意識とでも言える手だ。

実際の評価値を以下に貼る。

37手目 評価値

g6が最善でa4は8石損だった。僕が懸念していた進行が互いに最善で、g6g5h5h3と進む。

g6g5h5h3

この40手目の盤面まで読んで、h4が上辺と干渉してしまうため不安を感じていた。しかし、ここでh4h6g2とXラインを通す手が成立する。(f8の置き打ちでも勝ち。)

h4h6g2

ここまで読めればg6を選択出来たと思う。ただし、g6の時点ではブラックライン(右肩上がりのXライン)がまだらであるため、Xライン通しは読みづらい。正直調子が良い時にこの盤面と出会っても、またa2に打つかもしれない。

a2の余裕手発射により、いよいよ生きるか死ぬかの戦いになった。

a2後 白番

a2の後、白は右側のどこに打ってもあまり評価値が変わらない。

ここで相手が長考している間、僕が盤面を眺めて抱いた印象は、「どこに打たれても結構絶望的」だった。見れば見るほど大変そうに感じてくるのだ。僕は試合中は強気なことが多く、むしろ強気すぎてミスをすることが多いのだが、振り返るとこの試合はかなり弱気だった。歳だろうか。

相手はこれまた予想外のb8を選択したがこれは少し悪手である。いよいよ右側に手をつけるしかないため、g6g5と進む。

b8g6g5

ここまで進んで少し自信を取り戻す。最善はh5だが、これまた相手に主導権を委ねるc8を選択。その後の相手のh6が10石損で黒大幅有利になった。

c8h6

c8のあとは白h5ならばh3、白h3ならばh5でブラックラインを通す、という構想で、実際どちらでも黒勝ち形勢である。結果的にc8も良い選択だったと思う。

h6の後はh5h3h7h4h2g7と進み、ここで右上が一時的に白から打てない奇数空きとして機能するため、黒が勝てる。地味に細かい石の違いがあるが、ここからはしっかり最善手順で進み、16石勝ちとなった。

終局まで

消極的な攻め意識が、結果的には功を奏した。本来は最善を読み切って勝つことが理想だが、妥協して相手に選択を委ねるのも戦略の一つである。

6試合目 H三段 黒持ち

序盤にリードを築いたものの、この局面で時間を使った結果、10石損のd8に打ってしまった。d8e3f2の後g3と打たれると意外と黒が困ってしまう。実戦もそう進んだ。

d8e3f2g3

最善はe3。e3b6d8b5g3h4と進んだ後、b7とXを通して黒優勢になる。

最善手順

ここまで読めなくても、e3は「争点の中割り」という基礎に従えば1手読み、むしろ感覚的に0手読みで打てる手だった。

d8の選択も勝手読みをしてしまった結果だ。

d8e3f2b6b5まで読んで、そこで白がa5に打った場合a3が一方向返しになることに気づきd8を選択した。

勝手読み

結果、4手目の白b6が勝手読みで白はg3と中横をして十分だったわけだ。勝手読みの7手読みより直感の0手読みの方が、結果的には優れていた。オセロは難しい。

互いに小さなミスはあるもののそのまま互角で進む。ここで左辺のウィングを攻める時に、XではなくCから打つ方がb列に黒石が残るため良い。

Xの場合 b7a8a7b8a1b2

Cの場合 b8a8a7b7a1b2b1

a7の後、白はb7を放置することができるが、他に特別良い手があるわけではないため問題ない。実戦でも僕がCから攻めて相手はb7をすぐ埋めて下の盤面になる。

白b7後 黒番

白にg3の中辺の横取りをされてから、僕はずっと若干の劣勢を感じており、時間配分もやや押され気味だった。しかし、Cからのウィング攻めが綺麗に決まれば黒が優勢だろうという感覚があった。

相手は何か抵抗してくるだろうと予想しており、そこで自分も深く考えるつもりだった。しかし、相手は40手目a8も42手目b7もほぼ時間を使わずに選択した。ここで少し焦りが生じていたのだろう。その後、あまり時間を使わずに、この試合2度目の大悪手となるh3に打ってしまった(10石損)。

h3 大悪手

ここはa1と左辺を取る手で4石勝ちだった。h3は末国トラップを狙った手だが、実はシンプルにh5と爆弾にすれば白6石勝ちとなる。先に言ってしまうと、実戦では爆弾にされず、h2と1:3の形にされて助かった。打った直後にミスに気づいたが、「末国トラップで私の勝ちです」という顔を作っていたことが少しは効いたかもしれない。

爆弾にされた場合を見てみよう。末国トラップにするには黒は右下に手をつけずに上側だけでまとめたい。しかし、白g2のXが強すぎてそれが叶わないのだ。h5と爆弾にしてきてa1と取ったあと、例えばb2b1g2と進むと黒は右下に手をつけなければならない。

h5a1b2b1g2

ちなみに黒a1の後の白の最善はg2である。

g2b2g1

ここで黒f1と打っても、h1h2e1でダメである。

f1h1h2e1

爆弾になった後の白g2のX打ちを甘く見積もっていたために起きたミスだった。

末国トラップに出来ないのならば白が内側の爆弾をこのタイミングで作る意味はない。シンプルに左辺を取るべきだった。

実戦では相手は少し考えて、まあh2でいいかという感じでh2を選択してくれた。これが敗着となった。a1と取って、その後の白e1が決定的な悪手。h5h7と右下をホール系にして、それを利用して勝つことができた。

h2から終局まで

46手目はb2が一番の粘り。b2b1g2と進めると黒は簡単には勝てない(黒2石勝ち局面)。

b2b1g2

実戦と同じようにh5h7g8f8h1h8と進めてもここで上側に打てないため逆偶数にならない。

h5h7g8f8h1h8

大会ではいつも5試合目辺りから読みが衰えがちなので体力をつけて克服したい。

まとめ

反省点の多い内容だった。

  • 試合に影響しない局面で早打ちをする(嗅覚)。
  • 長手数読む時は読み抜けがないように。
  • 相手に時間で押されていても焦らない。

この3つをできるようになりたい。

終盤石損が安定していたのは良かった。

2,4,4,4,4,10 ave 4.7

 

快適な競技環境をご整備いただいた運営各位に感謝申し上げます。

世界戦での日本人選手のご活躍を期待いたします。

 

 

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